阿闍梨
二人の女は、愛護が父蔵人に此由を告げはすまいかといふ懸念から、逆に若を陥れる謀を用ゐる事になる。それは、重宝の鞍・刀を盗み出して、月小夜の夫に手渡し、都も都、桜の門で呼び売りさせて、清平の目につく様にして、若が盗んで売らせるのだ、と言はせようといふ魂胆である。此謀が早速成就して、怒つた清平は、若を高手小手に縛つて、桜の木に吊り上げて置く。若は苦しさのあまりに、血を吐いて悶えてゐると、手白の猿が主人を救はうとして、木に上るが、縄を解く事が出来ぬ(三段目)。
処が一転して、地獄の閻魔王の庁では、若の母が出て、若の命乞ひをして、自身出向いて救ひたいと願ふ。魂を仮托する死骸はないかと、鬼に見させると、娑婆では今日、人には死んだ者はないが、鼬が一匹斃れたといふ。母は早速、鼬の身に魂を托して、桜の下に現れ、若の縄を食ひ切つて助けると、手白が下で抱き止めて、怪我なく助つた。鼬は、母が仮りに姿を現したのだと告げて、かうしてゐては、終には命も危いから、叡山西塔の北谷にゐる、若の叔父帥(ソチ)ノ阿闍梨の処へ逃げて行くやうに、と諭して姿を消す。若は家を抜け出る日を待つて居る(四段目)。
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by yuugaavvv | 2006-02-18 16:14